レオタードのにほい
「プロローグ」 |
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その土曜日の午後は、雲ひとつ無いみごとな秋晴れであった。ほんのわずかに夜の気配を含んだヒヤリとした風が、無人のグランドを吹き抜けていく。 ところが今日はちょうど、両部とも大会決勝戦で出払っており、他の生徒たちも応援のために競技会場へ動員されている。また、他の運動部もそれぞれ、なにかしらの事情で練習しておらず、予期せぬエアポケットのように静かな土曜日となっていた。 |
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博子が赴任してくるまで、まったく何の戦績も無かった新体操部は、若葉学園のようなスポーツエリート校にあっては在校生ですら知らない者が多かった。事実、一昨年は廃部の危機に見舞われるのだが、理事長の鶴の一声で存続が決まった経緯がある。 まもなく三十路を迎えるこの女教師は、その美貌に年齢相応の陰りも見えたが、それでも校舎を歩けば、だれもがハッと振り返るような輝きを放っていた。そのことからしても、現役時代の美しさは容易に想像できたが、それは彼女の人間的魅力のほんの一部に過ぎない。新体操の指導もまた、聡明、的確で、教わるものの心を掴んで離さないものであった。 |
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いつも練習用のレオタードだけでは楽しくないだろうと、大会の前には競技用のレオタードを着用して練習する日を設けたりした。それまで、弱小チームゆえに試合の少なかった部員達は、当然華やかな競技用レオタードをお披露目する機会にも恵まれない。 そんな練習日には、博子も競技用の衣装を着用し、実際に難度の高い技を実演して見せた。部員達は、衰えることのない博子の美しい演技に感動し、大いに刺激を受けメキメキと実力を増していく。 しかし、薄いレオタードをまとい、美しさを競う新体操は、とかく男性の好奇の目線に晒されがちだ。男子生徒達は、体育館の外からチラチラとこちらに視線を送っていたし、同僚の男性教師や教頭、あきれることに用務員まで、なにかと言っては体育館を覗きに来る。 |
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しかし、大人となった今は違う。 肌にピッタリと密着したレオタードを見つめる男たちの視線は、実はその下に包まれた彼女らの裸体を舐めるように見透かしているのだ。 そんな、男たちの目線も今日は気にする必要はない。 |