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「いやぁ〜さすがは生徒指導主任、結城先生のクラスですな」
美穂は職員室で呼び止められた。教頭である。
聞けば、美穂のクラスで自主的に行なっている、早朝掃除の件であった。放課後、掃除をして、次の日の朝にまた掃除をする意味を、教頭はいいように解釈しているようであった。
「最初、先生の体罰指導は、いかがなものかと思っていましたがね、やはり少しくらい厳しくしないといかんという事ですかな」
柔道と剣道の有段者の美穂にとっては、荒れた生徒たちの暴力も脅威に感じない。事実、腕力でやりあう場面があっても、このスポーツ万能の女教師にかなう生徒はいなかった。
確かに今の時代である。体罰は問題になってもおかしくなかったが、彼女の熱心な教育方針を聞かされると、周囲の大人たちは皆納得し、彼女の擁護者、理解者になりあるいはファンになった。
しかも、この早朝掃除に生徒達は嬉々として従っていると聞かされ、前出の教頭の発言となったのである。
本来なら、自分の信じる教育方針が褒められたのだから、笑顔の一つでも返すところだろうが、彼女の顔色はさえない。
事実、生徒達は朝も放課後も誰一人欠けることなく掃除をしているようだった。
ただ、 不思議なことに、朝は他の生徒が登校してくる前には終わっており、放課後は、教室を締め切った状態で、下校時刻になるまで掃除をしているのである。
そのことに疑問をもつ人間はいなかった。 |