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ここの学校は新校舎と旧校舎があり、旧校舎のほうは上履きに履き替えなくても良い。

旧校舎といっても薄汚いボロボロの建物ではない。デザイン性の高いレトロな雰囲気の感じのいい建物である。窓は大きくとってあり、光も十分にとってある。そんな明るい廊下に、さらにまばゆいばかりの美女、女教師由紀子が、ブーツの踵をコツコツと格調高い音を立てて歩いていた。

今日の由紀子はまた一段と美しかった。シックなロングスカート、純白のブラウス、そして淡いピンクのカーディガンを羽織っているところに、優美さの中にはちきれんばかりの可憐さも兼ね備えている!セミロングの艶のある黒髪をなびかせて、レトロな建物の中を歩く姿はそれだけで美しいひとつの絵として成立してしまうぐらいだ。これで、由紀子が古風なヘアバンドでもしていたら、70年代のテレビドラマに出てくる清楚で高貴な深窓の令嬢だ。

しかし、古臭さや、時代遅れな風には全く見えない。それは由紀子がスラリと背が高く、その上プロポーションも抜群で、実に現代的な美女であるからだ。今風でないのは、由紀子が派手なファッションにあまり興味がない、真面目で古風な性格が良く現れている。それでもやはり、若い女性だ。美しく着飾ることは好きで、地味な衣服を選んではいるが、なんとも華麗である!!

白く透き通るような肌と黒く澄んだ瞳には何故か憂いを含んでいてそれがなんとも色っぽい…

昼下がりの午後、暖かい光に包まれた古く明るい校舎。

だが、こんなに明るく爽やかな所でも、その影には暗く澱んだ暗黒の世界がある!!その暗闇には卑劣な野獣が目をギラつかせ、この女教師という名の、か弱く、美しすぎる獲物を狙っているのだ!!

由紀子はある扉の前をとおりすぎようとした時だった。そこは、普段使わない教材などを置いておく備品室だ。その扉が突然ガラリと開いた!!!

「えっ!?」

あまりにも突然だったので、由紀子は驚きのあまり、何も反応できなかった!!

その、暗闇の中から、ニュウッ!と二本のたくましい腕が飛び出した!!それが由紀子の柔肉に食い込む!!

そして、何が潜んでいるのか全く分からない暗黒の世界に、まばゆい美貌の女教師を引きずりこんでしまった!!

そして、暗黒の扉がピシャリッと閉まった。

「ひいいっ!!!いやあっ!…やめなさ…い…んん………あ…」

恐怖に満ちた悲鳴がだんだん小さくなって、ついには聞こえなくなったしまう…

おそらく、廊下側から見ると、美しく可憐な女教師が、何の前触れもなく突然消えてしまったかのように見えたに違いない。

由紀子はその卑劣な野獣が加藤である事がしばらくの間、判らなかった。

 

   
   

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