秘密の女教師 其の三

ある日、美佐は校長室に呼び出された。

何も悪いことをしていなくても、上司に呼び出されたら誰でも緊張してしまうものであるが、やましい事が一切無く、心に一転の曇りも無い美佐は、いつもの凛とした涼しい顔で校長室に赴いた。

「失礼します、雪村です」

 

そこで校長と話した美佐は、この学校に来てからの疑問のいくつかが明らかになった。

何故、この学校には真面目な生徒と問題のある生徒が混在しているのか?

何故、不良生徒を更生させようとするような情熱のある教師が居ないのか?

 

一言で説明すると、校長と理事長の間に対立があるらしい。教育者の校長としては真面目な普通の生徒を集めて、ちゃんとした進学校にしたいという希望がある。いや、進学校でなくても、何処に名前を出しても恥ずかしくない普通の教育が出来る学校にしたいと思っている。

しかし、理事長は経営者である。どんな生徒でも受け入れて入学費を稼ぎたい。下手に生徒を更生させる熱血教師が居るよりは、いい加減な生徒には出来るだけ留年してもらって授業料を落としてほしいのだ。当然教職員も校長派、理事長派に分かれていて、その影響で極端な2通りの生徒が集まってしまったのだ。

さらには、2派の対立に乗じて、悪い生徒に迎合し堕落した教師まで居るという。

 

美佐がこの学校に赴任してしばらくの間様子を見ていた校長は、その真面目な勤務態度を見て、自分と同じ考えを持っていることを確認し、この学校を良くする為の同士になって欲しいと告げた。もちろん美佐は快く同意した。

「只、雪村先生には、素行の悪い生徒にも情熱ある指導もして欲しいと思っていますが…」

校長は、話の最後にこう付け加えた。悪い生徒には、切り捨てるような冷たい態度を取ってしまう美佐の短所についての軽い皮肉だった。

余りにも的確な指摘に、美佐は思わず苦笑した。

   
   

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