秘密の女教師 其の二

 

雪村美佐がこの学校に赴任して、しばらくするとおかしな事に気が付いた。

自分の担当しているクラスは素直な普通の生徒ばかりなのに、それ以外のクラスは驚くほどに荒れていた。酷い所となると小学生の学級崩壊並みの荒れ方をしている。

美佐は数学を教えているので、そういう荒れているクラスでも授業をする事もあるが誰一人真面目に授業を聞く気が無いようだった。

特に男子生徒の視線にはウンザリする。彼らは美佐を教師としてではなく性的な意味での女としか見ていないのだ。元々、美麗な顔立ちとスラリとした抜群のスタイルを持つ美佐にとって、こういういやらしい視線に慣れっこではあるが、こんな年下の男、しかも生徒にメスとして見られるのは全く腹が立つ事である。

「先生!今度イッパツ、ヤらせてくださいよ!」

授業の流れを無視してこんな事を言われるのは日常茶飯事である。美佐の性格としてこういう生徒に対し、恥ずかしそうに顔を赤らめたり、声を荒げて怒ったりはしない。ただ冷たい視線を送り、無言で無視するであった。そんな毅然とした高貴な瞳がゾクゾクするほどに色っぽい。

 

中には何故退学にならないのか不思議に思ってしまうような生徒もいる。最近はどの学校も経営難で、入学希望者を集めるのに苦労している事は知っているので、おそらく理由はそんな所だろう。美佐を採用した校長の思惑としては、武道の達人でもある美佐に柔道部の顧問をさせて、優秀な成績を残し、まずはスポーツ面で名を馳せ入学者増を狙っているのだろう。実際サッカー部や野球部にもそういう先生、コーチがいた。

というわけで、美佐は柔道部の顧問になった。担任クラスの生徒で柔道部員でもある大男の小山などは、美佐の第一の子分、もしくは美貌の女神を崇拝する熱狂的な信者だった。こんな素直な生徒もいるのに…と美佐は思ってしまうほどに、他の生徒は荒れている。

 

その日、いつものように柔道部の練習を見て職員室に帰るときだった。

道場を出て、体育館の横を抜け、校舎に向かう途中、体育用具室の前を通った時だった。

ガタガタガタ…

というおかしな音がする。

どうせまた、部活動に参加していない生徒がここに侵入して何か悪い事でもしているに違いないだろう。教師ならば注意すべき所ではあるが、美佐に興味は無い。普通の生徒や、少し道に迷い悪い方に進みそうな生徒なら情熱をもって指導するが、ああいうどうしょうもなく悪い生徒には関わりたくも無い。そういうクールな面を持っている。

そのまま通り過ぎるつもりだったが、やはりおかしい。

良く耳を澄ましてみた。

「んんご…いやあ…た、たすけてぇ!や、やめっ!」

女生徒の声だ、しかもこれはただ事ではない!何か大変な事が起こっている事は間違いない!

そうなると、美佐の行動は早い。ほとんど反射的に美しい肢体を躍らせて用具室の扉を開き中に飛び込んでいった。

   
   

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